2011年3月4日金曜日

英国再度の景気後退、アイルランド政権交代

景気が悪いときには政府が支出を大きくして有効需要をつくってやり不況からの脱却をはかるのが基本だ。これはGDPにおける個人消費の落ち込みをカバーして政府負債が対名目GDP比で見て悪くならないようにする効果もある。アダム・スミスのいうような神の見えざる手は実際には機能しないのだ。日本では経済政策の失敗のために15年以上もデフレが続いているが、イギリスや欧州も下手をすれば同じような長期デフレになる可能性がある。欧州はPIIGS問題のために緊縮財政がはやってしまっているし、英国では保守党・LibDem連立政権のもとでおそろしい緊縮財政を始めている。英国では昨年10月から12月にかけてのGDPが前期比で0.5%減であった(英政府統計局(ONS)による)。これは寒波のせいだという人もいるが実質は緊縮財政政策の結果だろう。イングランド銀行総裁であるマーヴィン・キングは金融緩和を継続する意向のようだ。一方の米国は大胆にも大規模な金融緩和を継続させ、QE2にいたってはおよそ60兆円もの紙幣を同国経済に投入し、ゆっくりとではあるが経済を回復させてきている。(これが現在の中東地域での市民デモ・反乱の引き金になったことは否定できない。だが内政不干渉の原則によって米国の大規模な金融緩和は国際的には正当化されるはずだ。問題は2点あって、米国内での投資先が少なく金融緩和で市場に与えられたお金が外国へ流れてしまうことと、国際金融システムに規制があまりかかっていないことだ。前者に関してはTea Partyのような無慈悲な団体がオバマ大統領の政策を拒絶しているため大統領が積極財政政策をとれないことに起因する。後者に関しては、やはり国際的な話し合いが必要だろう。)依然として米国の失業率は高い。だが米国や中国が現在やっているように、紙幣を大量に発行するという政策は経済を後押しするということが明らかになったわけだ。日本も日銀がもっと大胆に金融緩和をすべきなのだ。米中がGDPを着実に伸ばしている一方で欧州には経済学に理解のない人たちが権力の座についていて緊縮財政を強行しているようだ。

その欧州の西の島国アイルランドでは最大野党である統一アイルランド党が勝利し、労働党と連立を組む情勢になってきた。統一アイルランド党の代表であるエンダ・ケニー氏が同国の新しい首相になる公算が大である。与党の共和党は理不尽な緊縮財政を行ったため国民の反発を招いた。アイルランドはユーロを導入する以前は経常収支が黒字であり経済もしっかり伸びていたのだが、ユーロ導入後にはドイツと同じ為替水準で勝負しなくてはならないために経常収支が赤字に転落してしまい、いまもそうだ。ケニー氏はIMFに対し金融支援の条件改善(具体的には金利の抑制)を求めている。アイルランドがやるべきことはユーロを離脱し独自通貨を再導入することだ。そうすれば自らの力でお金を発行でき、MBを調節しながら通貨下落による輸出改善が期待できる。けれどもドイツのメルケル首相は金利引下げに否定的である。メルケル氏やドイツにとっては金融支援をした方がドイツのためになる。というのもECBがユーロを大量発行し、結果としてユーロが下落するとそれにより今以上にドイツは輸出に好条件となり経常収支が伸びるからだ。しかしドイツ国民とその代表は、なぜかそれを許さないようだ。メルケル首相の経済アドバイザーはどのような提言を彼女にしているのだろうか。

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