2011年8月23日火曜日

リビア内戦(7)

今年8月にイタリアが公式にNATOに対し、リビア難民の救出を要請。これはリビア内戦が始まって以来はじめてイタリアがイニシアティブをとった格好だ。それら難民はリビアから脱出し、イタリア領であるランペデューサ島(地中海にあるぺラージェ諸島の一つ)を目指していたのだと考えるのが妥当。24000人もの難民の多くは、そのランペデューサ島にいるようだ。ランペデュ-ザ島はリビアやチュニジアから最も近く、難民としてもここを目指すことが目標だったはずだ。けれども渡航力の無い船で地中海を進むのは困難を極める。多くのリビアからの難民が今なお地中海上でさまよっている可能性はある。

NATOの軍艦が、リビアからの難民をほったらかしにしていたというレポートがあったが、今年5月にNATOがそれを否定した。NATOの司令官らは当然国際条約について熟知しているはずだ。これは、海上における人命の安全のための国際条約(Solas, 1974)と呼ばれている。これは主に商船にとって最も大事な国際法の一種である。
とりわけ5章では、海上安全の観点から、政府がその国の全ての船に十分な人員を配置させることがうたわれている。

イタリア外務大臣であるフランコ・フラティーニはNATOのイタリア大使に、NATOがリビアについての現行法を修正し、リビアからの政治的避難民を救助できるようにするための議論をスタートさせるように依頼していた。イタリアは、リビアを包囲するためにいるNATO軍が難民からのSOSに知らないふりをしていた
という報告について調査するよう要請した。がイタリアも様々な意見があるようで、上院議員の北方地方の総務であるフェデリコ・ブリコーロはNATOがすべきなのはリビアに集中攻撃をかけるだけでなくリビアからの難民ボートをブロックし本国に送り返すことだと述べている。このブリコーロと言う人はかなりの右よりだと推測される。

そうしているうちに、42年間続いたカダフィ政権は崩壊したという情報が入った。反体制派が首都のトリポリをほぼ陥落させたという。トリポリの緑の広場では多くの群集が反乱軍のトリポリ入りを祝った。少し前には、人口70万のミスラタがカダフィ軍の激しい攻撃に晒されていたが何とか反体制派が形勢を逆転させた。カダフィ大佐の近衛兵士も減少し、カダフィ軍は敗北の様相が高まっている。トリポリのあちこちで体制側が戦っているが、NATOの空爆が質・量ともに5ヶ月前とは比べ物にならないくらい激烈なっていて48時間に40もの空爆ミッションがあり、体制側が圧倒されている。NATOの空爆の精度は時期と場所にたぶんに依存するのだろう。特に体制側からの対空砲火が激しい時や砂嵐があるときなどは、精度はかなり低下すると考えられる。今年4月30日にカダフィ大佐の長男であるセイフ・アラブ氏や孫がNATOの空爆で殺害された時は、それなりの精度があったのだろう。今後はカダフィ政権後のレジームのあり方がリビア情勢の焦点になってくる。

それでも体制側は地下の隠れ家やトンネルに身を潜めていて、依然として抵抗はまだあるようだ。カダフィ大佐の生まれ故郷であるスルトから22日2発のスカッドミサイルが発射されたことをNATO側が発表した。トリポリ以外でもまだカダフィ軍と反体制側とで激しい戦闘が行われている。ズリテンの南2マイルなどは激戦地区である。

 リビア国民評議会のリーダーであるムスタファ・アブドルジャリルは、真の勝利はカダフィがつかまった時だと述べた。実際に少し前にカダフィ大佐の次男であるセイフ・イスラム氏(LSEへ2億円の寄付をした人)が反乱軍のトリポリ制圧の最中に反乱軍に捕らえられたという情報が流れたが、セイフ・イスラム氏本人がトリポリ内のホテルで支持者らに健在振りを示した。米国政府高官である、ジェフリー・フェルトマンによれば正確な居場所はわからないがカダフィは依然としてリビア国内にいるという。
 
カダフィ政権のプロパガンダだったリビア国営放送は、反体制側が通信機器を押さえた際にその放送機関から立ち去ったようだ。

22日、オバマ大統領は「カダフィは金銭的にも軍事的にも消耗していて、カダフィの部隊も弱ってきている。ここ数日でリビア情勢は大きく(クライマックスへ)動き出した。トリポリ市民は自由を主張できるようになっている。米国はリビアの友人でありパートナーだが、反乱軍には暴力的なあだ討ちという手段に正義を求めることには賛同できない」という類の声明を出している。英国のキャメロン首相はカダフィ大佐が、彼がリビア国民に行ったおぞましい行為についてしっかり(法的な)正義と向き合うことを望むと述べている。キャメロンはオバマのスタンスとはやや異なり、新しいレジームがリビアの方向性を決め、同時にカダフィ大佐への処罰をも決めるべきであると考えているようだ。英国は凍結していた120億ポンド(今の為替で約1.5兆円)にものぼるリビアの資産をリリースするようだ。ドイツもそれにならい70億ポンドのリビアの資産のリリースを検討している。国連トップのバン・ギムンはカダフィ政権後のリビアへのサポートに関しての話し合いを開くとしている。

反体制側がカダフィ大佐の邸宅のあるバーブ・アジジャ地区を制圧したと言うニュースも入ってきている。