ドイツのメルケル首相が10月28日にブリュッセルにて行われたEUサミットの夕食会にて、ドイツがユーロを放棄するということを示唆したという。ドイツは、経済支援をうけたユーロ加盟国からEU Councils での投票権を剥奪することを要求していたが、それは経済小国にとっては不公平で非民主的なシステムになってしまう。1999年にユーロが導入されて以来、同通貨システムの今後の不確定性は最大に近づきつつある。ギリシャやアイルランドを救済したところで、それらの国の経済が回復するわけではないし、スペインやポルトガルの債務危機が顕在化するのは遠い話ではない。救済する(救済できる)のは経常収支黒字のドイツくらいなものだが、そのドイツが今回「ユーロからの離脱も一つのオプションだ」と(夕食会にて)暗にそそのかしたことでその通貨の先行きは一層不透明になったと思われる。
リスボン条約は2007年12月にEU加盟国によって署名され昨年度12月に発行した。この条約はマーストリヒト条約とローマ条約の修正であり、 より中央集権的(ドイツなどの大国寄り)になっているとの批判もある。European Council はEUの公式な機関となり事実上EUの政策の決める。投票システムの改定やEU加盟停止に対しても影響力を持つようだ。ドイツやフランスなど人口の多い大国は多く票が割り当てられるために、大国主導の意思決定機関になってしまう可能性もある。今回のブリュッセルでの会議では経済危機に対応するための体系を2013年に施行するという案を了承した。
チェコ共和国の首相であるPetr Necas氏は、ユーロ導入を急ぐべきではないと述べている。同首相は、現在チェコの独自通貨をコントロールすることで同国が利益を得ていることを繰り返しながら、同国をユーロ圏へ入れるかどうかは同国が決めることとし、今ユーロを導入する(もしくは導入の予定を決める)のは政治的・経済的に愚かなことであると述べている。ネチャス首相の主張は正しい。ユーロ加盟は金融政策の放棄と同等である分、経済が大国に比して弱い同国が今現在ユーロゾーンに入ることが同国の経常収支に悪影響を与えることは十二分に予期できるからだ。
ユーロに加盟するデメリットは簡単に言えば「主権国家がお金を刷る能力を失ってしまうこと」である。ユーロ圏ではEuropean Central Bank(ECB)のみがユーロの紙幣を発行できる。言い換えればユーロの加盟国は独自に政策金利の上げ下げや、お金を刷ってインフレ率の調整ができないのである。ゆえにひとたび政府の負債が膨らめば現在のギリシャ、アイルランド、スペインさらにはポルトガルなどのように負債問題を自力で解決できず長期金利が高騰し、EUやIMFに救済を要請するシナリオになるのだ。
PS. 国家の3要素とは領土、国民、主権であるが、その領土や国民を他国から守るために各国はそれぞれの自衛力を有していて、個別的自衛権もある(国連憲章51条)。簡単に言えば軍事力をもっている。この軍事力を他国に移譲してしまったらどうなるだろう?自国を防衛するすべが無くなり、他国と対等に交渉ができなくなってしまう。さらには軍隊や警察は治安維持に必要だが、これだけでは国民は安心した生活をおくることはできない。お金が無ければ食料を買うことができず、困窮してしまう。お金を得るには所得が必要で、所得を得るには一般には雇用されて労働することが求められるが、世の中が不景気では失業率が高くなり職を失う人が増えてくる。また企業赤字が増えて倒産を余儀なくされる企業も出てくる。それら失業率や企業業績を改善させるためには政策金利を下げて企業が銀行からお金を借りやすくしたり、中央銀行がしっかりお金を刷ってインフレ率を上げて企業や家庭持ちサラリーマンの債務や住宅ローンの負担を軽くしたりする金融緩和が不可欠である。なので金融政策を他国に任せることは軍事力を他国に移譲するようなものである。
2010年12月11日土曜日
2010年11月28日日曜日
アイルランドへの財政援助
過去にも述べたかもしれないが、2010年に入ってギリシャをはじめとするPIGS諸国の債務問題が深刻化し経済が悪化しているのは、これらの国々がユーロに加盟していることがその原因の一つだ。財政危機のためIMFやEUに約850億ユーロもの支援を要請しているアイルランドだが、1999年にユーロを導入する前は経常収支が黒字だったのだ。輸出が好調な理由は為替の変動の恩恵を受けることができたからだと考えられる。ゆえにユーロ加盟後はドイツのような強い経済の国と同じ為替レートで貿易が行われるために競争力が低下し、現在に至るまで毎年経常収支赤字となっているのだ。特にサブプライムショックとそれに続く2008年の米国金融危機の年度にはGDPの約-6%にまで経常収支が悪化したのだ。
景気がよいときは、アイルランドの銀行はユーロの為替を利用して他のEU諸国の銀行から多くの借り入れをし不動産などに投資ができる。しかし一旦バブルがはじけるとこれらの銀行は多大な損失を被る。同国政府はマーケットの信用を得るために政府支出を削るといっているが、投資家達はその政策がアイルランド経済をさらに悪くするとわかっている。実際、ブルームバーグによれば今月26日の時点でアイルランド国債の長期金利が9.19%まで上昇したのだ。たとえIMFやEUが財政支援を決めたとしても本質的な問題点が取り除かれたわけではないのである。不況下で歳出カットをすればその国は恐慌に陥ってしまう。失業率の上昇や賃金カット、さらには増税で国民は生活に苦しみできるだけ消費を抑えようとする、結果国のGDPは低下してしまうのだ。これにより政府負債の対GDP比は悪化するだろう。解決策としては、ユーロゾーン全体としての早急な金融政策の統合、もしくはアイルランドがユーロから離脱し独自通貨に戻すことであると考えられる。
景気がよいときは、アイルランドの銀行はユーロの為替を利用して他のEU諸国の銀行から多くの借り入れをし不動産などに投資ができる。しかし一旦バブルがはじけるとこれらの銀行は多大な損失を被る。同国政府はマーケットの信用を得るために政府支出を削るといっているが、投資家達はその政策がアイルランド経済をさらに悪くするとわかっている。実際、ブルームバーグによれば今月26日の時点でアイルランド国債の長期金利が9.19%まで上昇したのだ。たとえIMFやEUが財政支援を決めたとしても本質的な問題点が取り除かれたわけではないのである。不況下で歳出カットをすればその国は恐慌に陥ってしまう。失業率の上昇や賃金カット、さらには増税で国民は生活に苦しみできるだけ消費を抑えようとする、結果国のGDPは低下してしまうのだ。これにより政府負債の対GDP比は悪化するだろう。解決策としては、ユーロゾーン全体としての早急な金融政策の統合、もしくはアイルランドがユーロから離脱し独自通貨に戻すことであると考えられる。
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Europe economy
2010年9月29日水曜日
財政危機という宣伝
政府の負債がその国の名目GDPの何%になるかというような単純な尺度でもって、その国の財政健全度を測ろうとする傾向が日本を含め先進諸国で強くなってきていると思うのは私だけだろうか。今のヨーロッパは、ギリシャやアイルランドの財政危機を目の当たりにし、物事の本質を見ずにただ歳出カットや国民の負担増を求めたがる。(ユーロシステムは、金融と財政の分離という致命的な欠陥を有しているのだ。(Klugの記事参照のこと)それこそが現在のギリシャをはじめとする欧州の財政危機だというのに・・・)ユーロに加盟していない英国でさえ今年の6月に、保守党キャメロン首相の下、オズボーン財務大臣が財政悪化を口実に緊縮財政プランを打ち出したわけである。これによって2012年までにイギリスが景気の2番底に向かう確率が高まり、失業率の悪化とそうまって社会情勢が不安定になりそうだ。ノーベル賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツはこのオズボーンの緊縮プランは明らかな誤りとして非難している。
負債とは簡単に言えば借金のことだ。借金なのだから誰かからお金を借りていることになる。では、日本の場合は政府は誰からお金(2010年9月現在で約800兆円)を借りているのだろうか?実はこの点が全くといっていいほど議論されないのだが、日本国債の保有者の大多数は国内の投資家なのである。その利払いは国内に流れ、国内が潤うことになるのだ。言い換えれば、家族内でお金を回しあっているに過ぎないのである。現在中国政府が日本国債を買い始めているのだが、これは日本の国益に反する。中国政府に利払いがなされるので、その分のお金が中国へ流出するのだ。(*おかしいと思わないだろうか?日本が仮に財政危機であり、10年物の国債が今にも暴落するのだとしたらそんな危険な金融商品をなぜ中国政府が買おうとするだろうか?しかも米国債を売ってまでして。実際に長期金利は1%台であり、国債価格は極めて安定である。)
財政規律を重んじる人たちはバランスシートの片方だけを見て財政再建を訴えるのだが、資本主義においては’誰かの負債は誰かの資産である’がゆえに、政府が負債を増やしているということは別の経済主体が資産を増やしていることを意味しているわけだ。財政規律派はこの資産の部を無視している。日本の家計の金融資産は1400兆円と巨額だ。トータルでは日本は世界最大の対外純債権国、すなわち他の国にいっぱいお金を貸し付けているのである。多額のODA、IMF出資額世界第2位、米国債保有額世界1位もしくは2位、米軍への思いやり予算毎年5兆円などなど。これだけの出資が可能であるのに、どうして日本が財政危機なのだろう?
菅内閣は財務省主導の下、消費税増税にはしるかもしれない。 その際に財政危機という宣伝文句は良い口実になる。だが、主権者はもっと注意深くなるべきだ。なぜ法人税は減税されるのか。なぜ中国が日本国債を買うのか。なぜ、財政支出に否定的な一方で為替介入には積極的なのか。
負債とは簡単に言えば借金のことだ。借金なのだから誰かからお金を借りていることになる。では、日本の場合は政府は誰からお金(2010年9月現在で約800兆円)を借りているのだろうか?実はこの点が全くといっていいほど議論されないのだが、日本国債の保有者の大多数は国内の投資家なのである。その利払いは国内に流れ、国内が潤うことになるのだ。言い換えれば、家族内でお金を回しあっているに過ぎないのである。現在中国政府が日本国債を買い始めているのだが、これは日本の国益に反する。中国政府に利払いがなされるので、その分のお金が中国へ流出するのだ。(*おかしいと思わないだろうか?日本が仮に財政危機であり、10年物の国債が今にも暴落するのだとしたらそんな危険な金融商品をなぜ中国政府が買おうとするだろうか?しかも米国債を売ってまでして。実際に長期金利は1%台であり、国債価格は極めて安定である。)
財政規律を重んじる人たちはバランスシートの片方だけを見て財政再建を訴えるのだが、資本主義においては’誰かの負債は誰かの資産である’がゆえに、政府が負債を増やしているということは別の経済主体が資産を増やしていることを意味しているわけだ。財政規律派はこの資産の部を無視している。日本の家計の金融資産は1400兆円と巨額だ。トータルでは日本は世界最大の対外純債権国、すなわち他の国にいっぱいお金を貸し付けているのである。多額のODA、IMF出資額世界第2位、米国債保有額世界1位もしくは2位、米軍への思いやり予算毎年5兆円などなど。これだけの出資が可能であるのに、どうして日本が財政危機なのだろう?
菅内閣は財務省主導の下、消費税増税にはしるかもしれない。 その際に財政危機という宣伝文句は良い口実になる。だが、主権者はもっと注意深くなるべきだ。なぜ法人税は減税されるのか。なぜ中国が日本国債を買うのか。なぜ、財政支出に否定的な一方で為替介入には積極的なのか。
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