過去にも述べたかもしれないが、2010年に入ってギリシャをはじめとするPIGS諸国の債務問題が深刻化し経済が悪化しているのは、これらの国々がユーロに加盟していることがその原因の一つだ。財政危機のためIMFやEUに約850億ユーロもの支援を要請しているアイルランドだが、1999年にユーロを導入する前は経常収支が黒字だったのだ。輸出が好調な理由は為替の変動の恩恵を受けることができたからだと考えられる。ゆえにユーロ加盟後はドイツのような強い経済の国と同じ為替レートで貿易が行われるために競争力が低下し、現在に至るまで毎年経常収支赤字となっているのだ。特にサブプライムショックとそれに続く2008年の米国金融危機の年度にはGDPの約-6%にまで経常収支が悪化したのだ。
景気がよいときは、アイルランドの銀行はユーロの為替を利用して他のEU諸国の銀行から多くの借り入れをし不動産などに投資ができる。しかし一旦バブルがはじけるとこれらの銀行は多大な損失を被る。同国政府はマーケットの信用を得るために政府支出を削るといっているが、投資家達はその政策がアイルランド経済をさらに悪くするとわかっている。実際、ブルームバーグによれば今月26日の時点でアイルランド国債の長期金利が9.19%まで上昇したのだ。たとえIMFやEUが財政支援を決めたとしても本質的な問題点が取り除かれたわけではないのである。不況下で歳出カットをすればその国は恐慌に陥ってしまう。失業率の上昇や賃金カット、さらには増税で国民は生活に苦しみできるだけ消費を抑えようとする、結果国のGDPは低下してしまうのだ。これにより政府負債の対GDP比は悪化するだろう。解決策としては、ユーロゾーン全体としての早急な金融政策の統合、もしくはアイルランドがユーロから離脱し独自通貨に戻すことであると考えられる。
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