2010年11月7日日曜日

オバマ敗北と米国のその後

今月初旬の米国中間選挙における民主党敗北を受けて、オバマ大統領はその責任をとる声明を出している。米国大衆は一向に改善しない失業率の不満を今回の中間選挙であらわしたようだが、決してオバマの政策自体が悪かったわけではないのだ。約10%の失業率は2008年のリーマンショックのダメージが大きすぎたためであり、基本的には共和党ブッシュ政権の経済政策に誤りがあったからなのである。2008年の大統領選ののちオバマは大規模な景気刺激策をうった。もし、彼が政府支出をおこなわなかったなら今よりも失業者は増えていたはずだ。(クルーグマンは景気対策の規模は小さかった。もっと大規模な財政支出をすべきだったと述べている。)
オバマ政権でなされた国民皆保険制度やstudent loan programme(従来の私的貸し出し業者からの奨学金を廃止し、連邦政府が学生の学資を援助する仕組み)は極めて社会民主主義的な政策であり、国民の社会権を尊重するものだった。また、今月5月の金融改革法案はウォール街でマネーゲームをする連中へのけん制になり、金融資本主義からの脱却を図っていた。これは米国民にとっては歓迎すべきことであり、右から左へお金を回すだけで金儲けをしているような業種に規制をかけて、本当にまじめに働いている人たちへお金をまわせるようにし、結果として米国のものづくり産業を再興するためには大事なことだった。
けれども米国民は共和党を選んでしまった。共和党勝利を受けてオバマはその党との協議を余儀なくされるだろう。緊縮財政を唱えていた共和党はオバマ大統領に政府支出の削減を求めるはずだ。となれば米国が2番底の不況を迎えるのは必死だ。米国民は自らの手で自国を衰退させることになりそうだ。
これが現代における大衆民主主義である。物事の価値・正誤判断は大衆には本来難しいのだ。しかも現代においては社会が複雑になり、その傾向は益々高まっているといえる。にもかかわらず国家の大事な意思決定を彼らにゆだねるというのは現代民主主義が抱える一つの問題だ。

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