政府の負債がその国の名目GDPの何%になるかというような単純な尺度でもって、その国の財政健全度を測ろうとする傾向が日本を含め先進諸国で強くなってきていると思うのは私だけだろうか。今のヨーロッパは、ギリシャやアイルランドの財政危機を目の当たりにし、物事の本質を見ずにただ歳出カットや国民の負担増を求めたがる。(ユーロシステムは、金融と財政の分離という致命的な欠陥を有しているのだ。(Klugの記事参照のこと)それこそが現在のギリシャをはじめとする欧州の財政危機だというのに・・・)ユーロに加盟していない英国でさえ今年の6月に、保守党キャメロン首相の下、オズボーン財務大臣が財政悪化を口実に緊縮財政プランを打ち出したわけである。これによって2012年までにイギリスが景気の2番底に向かう確率が高まり、失業率の悪化とそうまって社会情勢が不安定になりそうだ。ノーベル賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツはこのオズボーンの緊縮プランは明らかな誤りとして非難している。
負債とは簡単に言えば借金のことだ。借金なのだから誰かからお金を借りていることになる。では、日本の場合は政府は誰からお金(2010年9月現在で約800兆円)を借りているのだろうか?実はこの点が全くといっていいほど議論されないのだが、日本国債の保有者の大多数は国内の投資家なのである。その利払いは国内に流れ、国内が潤うことになるのだ。言い換えれば、家族内でお金を回しあっているに過ぎないのである。現在中国政府が日本国債を買い始めているのだが、これは日本の国益に反する。中国政府に利払いがなされるので、その分のお金が中国へ流出するのだ。(*おかしいと思わないだろうか?日本が仮に財政危機であり、10年物の国債が今にも暴落するのだとしたらそんな危険な金融商品をなぜ中国政府が買おうとするだろうか?しかも米国債を売ってまでして。実際に長期金利は1%台であり、国債価格は極めて安定である。)
財政規律を重んじる人たちはバランスシートの片方だけを見て財政再建を訴えるのだが、資本主義においては’誰かの負債は誰かの資産である’がゆえに、政府が負債を増やしているということは別の経済主体が資産を増やしていることを意味しているわけだ。財政規律派はこの資産の部を無視している。日本の家計の金融資産は1400兆円と巨額だ。トータルでは日本は世界最大の対外純債権国、すなわち他の国にいっぱいお金を貸し付けているのである。多額のODA、IMF出資額世界第2位、米国債保有額世界1位もしくは2位、米軍への思いやり予算毎年5兆円などなど。これだけの出資が可能であるのに、どうして日本が財政危機なのだろう?
菅内閣は財務省主導の下、消費税増税にはしるかもしれない。 その際に財政危機という宣伝文句は良い口実になる。だが、主権者はもっと注意深くなるべきだ。なぜ法人税は減税されるのか。なぜ中国が日本国債を買うのか。なぜ、財政支出に否定的な一方で為替介入には積極的なのか。
0 件のコメント:
コメントを投稿