2010年9月24日金曜日

家計の負債と政府の負債

家計の負債と政府の負債を混同してはならないということだ。後者は通貨発行権を有しているから、自国通貨建ての負債ならば債務不履行になることはないのだ。簡単に言えばバンクノートをプリントして得たお金で借金を返済すれば良いのである。もちろんインフレ懸念は出るだろうが、緩やかなインフレは資本主義にとって望ましい、というのもそのようなインフレでは所得レベルの向上と需要の回復さらには政府の負債の減少が期待されるからである。メディアは政府の財政危機を煽り財政支出削減を叫ぶが、これらの情報に惑わされるべきではない。

ノーベル経済学賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツの発言にもあるように、緊縮財政は国を衰退させるだけである。政府が支出を削減すればそれだけGDPは減るし、需要が減少して景気が後退する。需要低下は価格の下落を招き、デフレスパイラルに陥ってしまう。結局、不景気から抜け出せず、政府の負債は増える結果に終わってしまう(政府の負債は対GDPで算出されるので、分母であるGDPが減ることで負債が悪化してしまう)。不況下では需要が不足するので政府による有効需要喚起が経済の基本だ。

保守党政権になり英国が緊縮路線に走り、結果として景気と社会情勢が悪化するのは目に見えている。 英国はユーロゾーンと異なりBank of England が金融政策を採れる(すなわち、お金をすることで負債返済が可能)わけであるから、ギリシャやスペインなどとは根本的に対策を異にするべきであるのに。増税路線をとるにしても、所得水準の高い層や資本家から多く徴収することで税収減をある程度補えるはずだが、トーリーはそれをとらないかもしれない。また、postal privatisation をはじめとする幾つかの公的セクターの民営化も懸念材料だ(ロイヤルメールに関してはどこまで公的部門から切り離すのかは議論されているが)。これによって多くの公務員がリストラされ失業率の悪化を招いてしまう。

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