2010年10月10日日曜日

買取オプション

戦後最大の歳出カットを目論んでいたジョージ・オズボーン財務相だったが、英国の景気後退予測を受けて、Bank of England (以下BOE)の金融緩和に対して肯定的になったようだ。オズボーンは2000億ポンドの債券買取プログラムを容認するだろう。これは世界的な金融緩和の傾向と競合しそうだ。例えば日本では日銀が5兆円規模の買取オプションを決めているし、米国でもFed がさらなる資産買取を宣言している。この結果輸出関連による外需増加を期待できない。

この需要が不足している状況での金融政策の景気浮揚効果に対しては疑問符がつく。米国でも、ジョセフ・スティグリッツが述べているようにFedでプリントされたお金が投資に回らないのだ。金融政策による雇用改善は期待薄であり、スティグリッツは需要喚起のための大規模な財政支出が不可欠と考えている。(もちろん量的緩和の効果は0ではないが。)一方英国では、債券市場を見る限りでは長期金利の上昇は低いとみる。民間の貯蓄が大きく、英国国債の多くは国内で消化されている(国債の7割)。英国はむしろデフレの懸念のほうが大きく、実際、9月の住宅価格は前月比で-3.6%である。

オズボーン自身は古典的な経済理論に依存しているようで、巨額の政府負債が長期金利の高騰と、信用リスク下落やマーケットの混乱を招くと考えているのかもしれない。消費税の増税も経済へのダメージは低いととらえているようだ。けれども、以前触れたように、現在の状況を見る限りでは古典論よりもケインジアンの方がよりよく現象を説明しているし、後者の描く有効需要こそ最善の打開策であることは明らかだ。

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