ムバラク大統領退任ののち軍部が権力を得たエジプトに対し、そのお隣のリビアでは市民のデモと政府側による反乱デモ武力鎮圧のせめぎあいが続いているようだ。リビアの最高指導者はムアンマル・カダフィ大佐である。ムバラク氏が30年エジプトを治めていたしていたのに対し、ガダフィ氏は40年以上も同国を統治している。反乱は先月15日にこのガダフィ政権への抵抗運動として始まり、先月末までにはカダフィ政権はリビアの多くの都市で統治能力を失うまでになっていが、首都であるトリポリでは情勢は異なるようだ。ガダフィ政権は武力でこれを鎮圧しようとしている。一方、反ガダフィ勢力はNational Transitional Council を形成し抗戦にでている。カダフィ大佐は、 彼自身は名誉職についていて、権力行使できる立場ではないしリビア国民は彼を敬愛していると述べている。またガダフィ大佐は「オバマは良い人間だが、彼にはリビアの状況について謝った情報が伝えられている。またアメリカ自体が世界の警察ではない」とし、全体として米国には裏切られたと感じているようだ。
反ガダフィ勢力は英国に助言を求めていて、英国もこの反乱軍に梃入れをするためにエキスパートをリビアに派遣してる。これは内政干渉に見えるが、英国政府筋の情報では関連する国際法があるため反乱軍に武器を供給するようなことはしないのだという。リビア外務副大臣であるKhaled Kaim 氏によれば同国はベネズエラのチャべス大統領が提案した和平交渉にのるようだ。そのことは米国を怒らせているらしい。英国外務大臣であるWilliam Hague 氏はリビア前内務大臣であるアブデュル・ファッタ・ヨウニス・オバイディ氏との接触を続けている。このオバイディ氏は反乱軍の指揮を執っていてガダフィ大佐の後継者とみなされている。
・国連やNATOの対応
国連安保理は先月26日に、ガダフィ大佐とその家族の渡航禁止や資産凍結を科すリビア制裁決議案を全会一致で採択した。またこの決議には、市民デモ鎮圧が非人道的である可能性についても指摘しつつ、リビアへの武器輸入禁止や国際刑事裁判所(ICC)に捜索を付託することなども盛り込まれている。NATOはそれに加盟する国の集団的自衛権の行使のための条約機構のはずだが、飛行禁止区域を含めたリビアへの軍事アクションプランを練っている。それは米国からも批判されている(もちろん米国にはこれを批判する資格は無いが)。アフガン抗争にて無慈悲な大量空爆をやっているような機構がリビア飛行禁止区域まで侵入するということに恐ろしさを覚えるのだ。(そのようなお金があるにもかかわらずEUはPIIGSに緊縮財政を要求している。)
・LSEへの寄付金問題
London School of Economics (LSE) ではカダフィ大佐の次男であるセイフイスラム氏から多額の寄付金を受け取っていたとして非難されており、その責任をとる形で同大学ハワード・デービス学長が辞任した。セイフイスラム氏はLSEにて博士号を取得している。2009年の6月に150万ポンド(約2億円)の寄付金が同大学に納入される話がでたらしく、LSEのカウンシルがその寄付金を得ることは脅威だと感じつつも全てを考慮するとセイフイスラム氏の誠実な寄付だという結論を出した。同年10月にデービス氏がそれを後押ししたようだ。このセイフイスラム氏はこの寄付金でPhDを得たとの疑惑がある。デービス元学長はセイフイスラム氏の経済顧問としてトニー・ブレア政権の2007年時にリビアを訪れたことがあり、金融システムに関するアドバイスを送っている。デービス氏が彼の友人に、「私はただトリポリでコーヒーを飲んだだけで、単なる脇役だ」と語っている。またデービス氏は、セイフイスラム氏の卒業式の際に彼と会い握手をしたことがあるだけで夕食を共にしたことはないとも話している。
このデービス氏自身は国際人でありまた数々の政治家達と仕事をしてきたテクノクラートでもある。学生やスタッフの間で大変人気がある。学長の職に留まることも可能であったが、「大学の評判を傷つけたことに責任がある」、「判断を誤った」と述べつつ、責任を取るほうを選んだようだ。
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