今月20日、東京消防庁は241人の隊員と消防車44台を福島第一原子力発電所へ派遣し、3号機への放水活動を行った。3号機よりわずか2メートルの距離に放水車を置き、地上22メートルの高さから放水した。はなれた場所で海水をくみ上げ、それを消防車に送りながら放水を行ったようだ。送水にあたっては全長800メートルのホースをひいたようだ。放水は3回にわけ、トータルで20時間かかったようだ。福島第一原発では消防隊の活躍によりわずかではあるが事態を改善させつつある。しかし依然としてメルトダウンの危険性は払拭されてはいない。今月23日には3号機より黒煙があがり、復旧作業が中断しているらしい。以前にも述べたが、3号機だけ燃料としてプルトニウムを使っているのだ。東電としては、外部電源をつなぐことで冷却水を送り込む予定であったが、結局1~4号機で作業が中断してしまった。5号機は使用済み核燃料のプールの温度が50度未満であり安全圏内ではあるが、ポンプにトラブルが発生し再び冷却機能が失われた。
・メルトダウン
メルトダウンとは深刻な原子炉事故の非正式用語であり、International Atomic Energy Agency (IAEA) によって定義されてはいない。大雑把には、原子炉のコアの部分が融けてしまう状態のことをさし、core melting accident (CMA、炉心溶融)がメルトダウンに近い意味をなす。炉心溶融は、単位核燃料の温度がその核燃料の融解温度を超えたときに発生する。平時には冷却水が炉心を冷やしているのだが、なんらかのトラブルでこの冷却機能を上回る状態で炉心で熱が発生すると原子炉が暴走する形でコアの温度がその融解温度へ達する。メルトダウンの発生は放射性核種の外部リークという更なる災害をもたらしかねない。
メルトダウンの原因としては、圧力制御の喪失や冷却機能不全、原子炉の出力の突発的上昇などがある。圧力制御喪失では冷却材の圧力が再起不能なほど低下する。この際(冷却材として不活性ガスを使っているときに)熱輸送効率の低下が起こりうる。水圧冷却型の原子炉(PWR)では核燃料の周りに蒸気の絶縁バブルが発生したりすることがある。ガス冷却型の原子炉(GCR)ではこのような圧力調節能低下によってコアの部分の圧力低下を招き、熱輸送効率低下と核燃料の冷却機能に大きな障害が出る。しかし、一つでも機能しているガス循環があれば核燃料は冷却状態が保たれる。PWRの原子炉は商業用の原子炉としては最もよく用いられていて、沸騰水型の原子炉(BWR)がこれに続く。BWRでは上記のような蒸気バブルは発生しにくい。
冷却機能不全の原因は、冷却剤そのものの損失か冷却剤の輸送障害のいずれか(もしくは両方)である。GCRではグラファイトを中性子減速剤とし、CO2を冷却剤として使用しているために
先ほど述べたPWRにおける蒸気バブルの発生は、立ち往生した冷却水が過剰に加熱されることによって生じるという観点から輸送障害に入れることができるだろう。1979年の米国のスリーマイル島原発事故では機器系統の異常などのほか、冷却水が(安全弁の固着により、開いたままになり)大量に失われてしまったことが直接の原因になった。
原子炉の突然の出力上昇は、中性子減速剤の特性変化や制御棒の噴射・排出などにより、中性子の連鎖反応に関する増倍率をつかさどる制限が著しく変えられてしまうために起こる。high power chnnel-type reactor (RBMK)は旧ソビエト連邦で主に使われていた原子炉で黒鉛によって中性子が減速されるタイプの原子炉であり、2010年においても11機稼動しているといわれている。RBMKでは自然ウラン(ウラニウム235)を燃料として使えるために、安上がりだったことが使用の決め手だったのかもしれない。RBMKは反応性に関する正のボイド係数をもち、減速剤や冷却剤に蒸気バブルなどボイド(空虚・空隙)が形成されたさいに炉心の出力が増加するようになっている。バブルは中性子を吸収しないため、炉心の出力がさらに増加するという正のフィードバック効果をもっている。これが1986年の旧ソ連でのチェルノブイリ事故の原因のひとつだった。
RBMKや液体ナトリウム冷却型の原子炉では、炉心での発火もメルトダウンの原因になる。グラファイトはWigner効果(中性子線による固体原子の配置転換;1MeVの中性子の衝突が900の配置転換をおこすようだ)の累積に左右されやすく、グラファイト自体を過剰加熱させる原因となる。1957年の英国でのWindscale fireはこれが原因だった。
・復興国債
現在、政府が今回の震災の復興支援のための復興国債を10兆円発行し、日銀に買い取ってもらう計画を練っているという。国債の日銀買取には賛成だ。政府紙幣の発行と国債の中央銀行による買取は実質的に同じものだ。今回の震災での被害は阪神大震災をこえるものであり、緊急の経済支援は当然だ。そうでなければ一体何のための国家なのだ?あのレッセ・フェールでさえ防衛や治安維持には財政支出が不可欠であるとしているのに、福祉国家を標榜する日本がそれすらやらなかったら全く経済をしらないのと同じである。
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