2011年6月17日金曜日

リビア内戦(5)

国債刑事裁判所はカダフィ大佐とその息子セイフイスラム氏、同国諜報機関の長であるAbdullah Sanussi氏への逮捕状を請求したが、その実効性に疑問符がつく。3年前にICCは、虐殺の罪でスーダンの大統領である オマル・アルバシール氏への逮捕状を承認したのだが、アルバシール氏はアフリカ諸国を逃げまわり結局その大統領を逮捕することはできなかった。今回のカダフィ大佐らの件でも同じことが起こるのではないかと思われる。またシリアやバーレーンでも同じような恐ろしい人権侵害がなされているにもかかわらず、リビアのケースにだけICCが関与するのは政治的なバイアスがかかっているといわざるを得ない。さらに言えば、アフリカ諸国のリーダーだけがICCの標的になっていることへの不公平感もあるだろう。アジア、ヨーロッパ諸国にだって内戦やジェノサイドが行われているためである。

しかし、現在リビアでおこっているカダフィ軍によるリビア市民への残虐な行為はいかなる理由を以ってしても正当化されない。人口約70万人のミスラタがカダフィ軍の激しい攻撃にさらされていて、2月15日の抗争開始から2ヶ月足らずで数百の市民が犠牲になっていることは既に書いた。そしてミスラタにいる反乱軍がNATOに援護を要請していることも周知の通りである。ミスラタにいる反乱軍はカダフィ軍との交戦の後に、カダフィ軍兵士が撤退の際に落としていった弾薬や武器を反乱軍のものとして活用している。

ミズラーターへの容赦ない攻撃は今もなお続いている。4月中旬からその都市へのカダフィ軍の攻撃が激しくなっていて、四方八方から攻撃をかけているようだ。そのため反乱軍は、防護壁や要塞を造りながら必死で防衛に当たりつつより一層のサポートをNATOに対して要請している。NATOはこの要請を無視していてこれが反乱軍の不満の要因になっている。NATOとの連絡係であるFathi Bashagaによれば、ベンガジにある司令塔へアパッチを投入しカダフィ軍と交戦するよう要請しているが回答を留保されているようだ。国連決議1973ではアパッチを投入できるだけの法的根拠となりえないと考えられるが、フランス軍と共に結局イギリスは6月上旬に4機のアパッチをリビア内戦へ投入したようだ。そしてフランスのメディアによれば、14のターゲットの破壊などそれなりの戦果もあげている。

それでもなお反乱軍のフラストレーションは減っていない。NATO側はミスラタ西方のカダフィ軍がミスラタへ大規模な攻撃を加えることが可能かどうかは明確ではないなどと悠長なことを言っているくらいである。それだけNATOの認識が甘いかもしくは大規模な空爆ができないことの口実としてそのようなことを言っているのであろう。また、NATO司令官らと反乱軍のコミュニケーション不足・連携不足で一般人が戦闘に巻き込まれてしまう懸念が高まっている。

カダフィ大佐に忠実なる学生リーダーがイタリアにて逮捕された模様。その学生リーダーは、リビア内戦における反乱軍の外交の代表であるアブドゥル・ラフマン・シャルガムを暗殺しようと企て、さらにはローマにあるリビア大使館を襲撃する計画も立てていたようである。そのリーダーの名はNuri Ahusainであり、イタリア国内でのリビア学生連合の長であり、anti-terrorist police によって彼の自宅にて逮捕されたようだ。Ahusain氏をリーダーとする犯行グループは十数名いるようであり、そのうちのAhusain氏のほかの2名が逮捕されている。シャルガム氏は2000年から2009年までカダフィ体制の外務大臣であり国連大使も務めていたが、今年2月25日に離反し、反体制側へついた人である。今年5月30日に記者会見の場に姿を現していた。

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